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水泳やスキ−、自転車などは、長期記憶の一例である。

二度やり方を覚えてしまうと、たとえ一年ぶりにスキーをやったとしても、手足の使い方を忘れていることはない。何年もやっていなくても、しばらくギクシャクとやっているうち、コツを思い出してくる。
つまり、身体を使って暗記すると忘れにくいのだ。筋肉線維が断裂するのを防ぐために、脳から抑制指令が出ているからだ。しかし、「危機的状況に直面すると、抑制がはずれる」ので、限度を超えた筋肉収縮を起こすことが判明している。
大脳も同様である。「明日が試験だ」という危機感によって、一日で大量の知識を暗記することができる。
一夜漬けが利くのは、そういうメカニズムからだ。だからこの際、毎日「明日が試験」だと、誤解して勉強してはどうか。
そんな嘘くさいことができるのか?
それができるのだ。
私はその昔、受験勉強期間がわずか四か月ほどしかないにもかかわらず、早々と「T大学に一発合格してみせる」と友人たちに宣言した。
この手を用いて、自分を危機的状況に追い込んでしまう。そうすると、毎日「明日が試験」の気分になり、おのずと勉強効率がアップしていく。
司法試験を目指しているのなら、「今度の司法試験に合格してやる」と周囲に公言してしまう。
さらに、親しい同僚になら、「合格発表の翌日には、会社に退職願を出す」とつづけてもいいだろう。そうすればもう、「やるっきゃない!」という気にならざるを得ない。
失敗したらどうするかは、失敗した後でじっくり考えればいい。そんなことをいまからクヨクヨ考えていたら、エンドルフィンもα波も出なくなってしまう。

失敗して会社勤めをつづけていれば、当然、あれこれ陰口をたたかれるだろう。しかし、そうして味わった屈辱感は、次回挑戦に向けての「やる気」の源泉ともなる。
だから、効率のいい勉強のためには、「不言実行」よりも「有言実行」のほうがいい。左脳ばかり酷使させ、右脳も要領よく使おう図式的記憶には覚えられる数に限界がある記憶には「機械的記憶(丸暗記)」と「論理的記憶」があると書いたが、もうひとつ、空間的・時間的に関連づけて覚える「図式的記憶」というものがある。
記憶術の類いは、古代ギリシャや古代ロ−マ時代にはすでにあったことが確認されていて、この時代に早くも、「図式的記憶」のノウハウが開発されていた。人類誕生から数百万年というスパンから考えれば驚くほどのことではないかもしれないが、少なくともここ3000年ほどのあいだ、記憶に関して人類は、さほど大きな進歩をしていないということだ。
その図式的記憶法の一つが、体の部位あるいは部屋の中にある物に関連づけて、いくつかのことを覚える「場所法」だ。これは、詩人のシモニデスの次の考え方にもとづくといわれる。
「エンピツを鼻に入れる」「カバンを耳にかける」と連想した経験を持つだけに、いまだに風化せず頭の隅に残っている。ただし、この「場所法」には大きな欠点がある。
覚えられる数がきわめて少ないことだ。

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